2007.03.02
清宮克幸の監督室 100『熱いものを思い出させてくれたシーズン』
◆自分が勇気づけられていく時間
今まで何十年も、負けて終わって次に立ち向かって行く、という経験をしていますので、負けた後の時間の過ごし方があると思っています。自分が勇気づけられていくというか、今はそういう時間なんですね。3月が終わったら完全に次へ向かっていってるでしょう。今もいろいろなことを考えていますけど、やっぱり自分たちに足りなかったこと、ダメなことに対して、どっぷり浸るのも大事だなと思っています。
エル(アラマ・イエレミア)がコーチになるチームは、最初はNPC(ニュージーランド国内選手権)のレベルですけれど、結果を出せばすぐにスーパー14へステップアップしていく道しるべが、ちゃんと見えていると思います。僕も数多く外国人と一緒にプレーしてきましたが、彼ほどピュアで誰からも愛される男はいないので、たぶんニュージーランドへ帰っても同じだと思うんです。きっと人心掌握して、トップコーチになっていくでしょう。「2011年、2015年というところでお互いに活躍しよう」なんて言って別れましたが、日曜日に日本を発ちました。
マットさん(林雅人コーチングコーディネーター)については本音では、「ここで慶応大学に帰らなかったら、帰る時はないよ」と思っていました。実はサントリーのことを考えると、「帰らないでくれ」というのが正直な気持ちで、やっぱり僕にできないチームのマネジメントができるコーチでした。たぶん僕とマットさんがパートナーを組んでいれば、剛柔あわせ持つみたいなイメージで、うまくやっていけるだろうなと思っていました。
慶応大学の監督になって、最初からサントリーで得た経験を全開にしていくでしょうね。「全開でいく」ということは、慶応にあるのと同様に早稲田にもノウハウがある筈で、双方の共通点でやっていきながらも、そこからそれぞれのオリジナリティを出していかないと、お互いに面白くないと思います。中竹(竜二/早稲田大学監督)も、僕がやってきたことに自分のオリジナリティを加えようとして今もがいていますし、マットさんが慶応の監督になって慶応がサントリーみたいになるかというと、そうではないと思いますしね。
◆スコッドの皆には自信を持って臨んでもらいたい
今年、新人の藤原(丈嗣)と野村(直矢)がニュージーランドへラグビー研修に行きます。去年は僕が新しく監督になったので、僕の新しいラグビーを覚えてもらわなくてはということで誰も行かせなかったんですが、今年はやりますしサントリーでは今まで何度もやっていることです。研修を経験したことがある選手に聞くと、「自分たちより格上のプロの選手が、そこまでやるのか?」というぐらいやっていて、それまでの自分が嫌になるくらいな気持ちになって、目から鱗が落ちて帰って来るイメージだそうです。彼らは今回2か月行きますが、いい経験をして帰ってくると思います。
今年1年を振り返った中で、ジャパンのスコッドにトップリーグのチームで最も多い9名が入ったというこの事実は、自分たちにとってとても嬉しいことです。チームに勢いがないと、こんなにスコッドには選ばれないと思ってます。サントリーの監督に就任した時にメンバーたちに「ジャパンにサントリーの選手が半分以上占めている、そういうチームになろう」と言いましたが、後はスコッドに選ばれた選手たちが、どれほど自信をもってセレクションに対してトライできるかだと思います。
そこがポイントで、「いや俺なんかまだまだ」なんて思っていると、それはカーワン(ジョン/日本代表ヘッドコーチ)にバレるし伝わると思います。JK(カーワンの愛称)と話していて、彼が欲してるのは「責任感が強い体の張れる選手」だと思いました。ボールを持って沢山走れる選手じゃない、と僕は思っているので、皆に自信を持って臨んでもらいたいですね。
◆36人が持っていたいい財産をルーキーたちが吸収
トヨタ戦で試合に出ている15人のうちルーキーが8人いた時間帯もありましたが、昔から社会人になった1年目のルーキーは、だいたい怪我をしているんです。大きな怪我がなかったということは、彼らがよく成長したってことじゃないかと思います。例えば新興チームがすごいリクルート活動をして、ルーキー10人が入って、その10人が試合に出て活躍できるか?と言えば、答えはノーだと思います。
そのルーキーが入っていく土壌がよくなければ、そんな簡単にルーキーに仕事ができるとは思えません。サントリーはルーキー以外のそこまでやってきた選手が36人いるんですが、彼らが持っていたいい財産をルーキーたちが吸収し、あるいは彼らがリードしたということだと思います。来シーズン、チームとしては4月1日からのスタートになりますが、もうグラウンドは週3回、自主練習のために解放していますし、ストレングスコーチも待機しています。来シーズンの新体制の発表は、3月中旬になります。
トップリーグの他のチームのある選手が何かの雑誌で、「今シーズンは大学ラグビーをやっているみたいだった。それほど熱いものを思い出させてくれたシーズンだった」というようなことをコメントしていました。僕はラグビーはそういうものだと思っているし、今年ファンがスタジアムに足を運んでくれた要因として、サントリーの熱さに惹き込まれて、「あぁ見に行ってみようかな」と思った方もいたと思います。来シーズンもサントリーは熱く、試合の3日前ぐらいからチームメイトの前で、ベテラン選手が涙を流すようなチームにしていきたいと思います。もちろん今年同様、情報公開もしていきますので、ご期待ください。
(清宮克幸の監督室 第100回) [構成:針谷 和昌/写真:長尾 亜紀]












